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相続トラブルを防ぐ遺言のすすめ|税理士が教える生前対策

スタッフブログ

2026.10.16

相続トラブルを防ぐ遺言と生前対策を表す、家と遺言書と封筒のイラスト

「うちは財産が少ないから、相続で揉めることはない」と思っていませんか。実はそう考えている家庭ほど、相続トラブルへの備えとして遺言を残しておく価値があります。

相続の争いは、資産家だけの話ではありません。分けにくい自宅と少しの預金だけ、という家庭でこそ、話し合いはこじれやすくなります。そして、いったん相続が起きると、残された家族が選べる手はぐっと少なくなるのです。この記事では、遺言がなく家族がばらばらになったモデルケースをもとに、相続の前に打てる対策をお伝えします。

この記事でわかること

  • 財産が少なくても相続トラブルが起きる理由
  • 公正証書遺言と自筆証書遺言の違いと選び方
  • 相続税も見据えた生前対策と、税理士・司法書士に相談する時期

相続トラブルはなぜ起きる?財産が少なくても揉める理由

相続トラブルが起きやすい3つの場面(財産の大半が自宅、介護の負担の差、相続人どうしの関係が薄い)を示す図

相続トラブルの多くは、財産の多さではなく「分けにくさ」と「気持ちのすれ違い」から起こります。遺言がなければ、遺産の分け方は相続人全員の話し合いで決めるしかありません。

この話し合いを遺産分割協議といい、誰がどの財産を受け継ぐかを相続人全員で決めるものです。一人でも納得しなければ成立せず、家庭裁判所の調停へ進むことになります。ここでは、揉めやすい場面と、相続が起きてからでは手遅れになりやすい理由を見ていきましょう。

揉めやすいのは「自宅が中心」の相続

財産の大半が自宅で、預金が少ない相続は、話し合いがこじれやすい形の代表です。自宅は現金のように切り分けられないからです。

ご相談を受けていると、次のような場面で家族の気持ちがすれ違う印象があります。

  • 親と同居していた子は自宅に住み続けたいが、ほかの子は取り分に見合うお金を望む
  • 介護を担った子と、遠方で暮らしていた子とで、親への貢献の受け止め方が違う
  • 再婚していて前の配偶者との子がいるなど、相続人どうしの関係が薄い

介護の苦労は、寄与分として考慮される場合もあります。寄与分とは、亡くなった方の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人の取り分を増やす制度です。とはいえ、認められるには介護の内容や期間を具体的に示す必要があり、簡単ではありません。こうした言葉にしにくい不公平感こそ、親が元気なうちに整理しておきたい部分です。

相続が起きてからでは打てる手が少ない

家庭裁判所の遺産分割事件の遺産額別の割合(1,000万円以下が約3割、5,000万円以下までで約4分の3)を示す図

2021年の司法統計年報で、家庭裁判所で遺産分割の調停などがまとまった事件を見てみます。すると、遺産額が5,000万円以下のものが全体の約4分の3を占めています。1,000万円以下の事件だけでも約3割あり、争いは決して資産家だけのものではありません。

相続が起きたあとは、亡くなった方の考えを確かめるすべがありません。残された家族は、それぞれの記憶と思いを頼りに話し合うことになり、正解のない議論が続きがちです。

しかも、相続税の申告期限は、亡くなったことを知った翌日から10か月と決まっています。話し合いが長引けば、期限に追われながら不利な条件で申告することにもなりかねません。生前であれば、親自身が分け方を決め、その理由を家族に伝えられます。対策の中心が遺言になるのは、そのためです。

モデルケース:遺言がなく家族がばらばらになった相続

モデルケースで、遺言がなかったために遺産分割がこじれ、特例が使えず、きょうだいが疎遠になるまでの流れを示す図

※以下は、よくいただくご相談をもとに作成したモデルケースです(特定の企業の事例ではありません)。

ここでは、遺言がなかったために、仲の良かったきょうだいが疎遠になってしまったケースを見ていきます。財産は自宅と預貯金、上場株式で、決して特別な家庭ではありません。

登場するのは、亡くなった父と、父と同居していた長男、結婚して県外で暮らす長女と次男です。母は先に亡くなっており、相続人はきょうだい3人になります。

課題:自宅をめぐって話し合いがこじれる

父の財産は、合計6,000万円だったとします。内訳は、自宅の土地(評価額3,000万円)と建物(400万円)、預貯金1,800万円、上場株式800万円です。長男は父の介護を長く担ってきたこともあり、自宅に住み続けるつもりでいました。一方、長女と次男は、それぞれ法定相続分の3分の1、つまり2,000万円に見合うお金を受け取りたいと考えます。

ところが、長男が自宅を相続すると、預貯金と株式をすべて2人に渡しても1人1,300万円にしかなりません。足りない分を埋めるには、家を売るか、長男が自分のお金で払うしかなくなります。どちらも、長男には受け入れがたい話でした。

長女と次男にしてみれば、遠方からでも折にふれて父を気にかけてきたという思いがあります。互いの言い分にそれぞれ理があるからこそ、話し合いは平行線のまま、家庭裁判所の調停へ進むことになりました。

経過:特例が使えず、きょうだいは疎遠に

遺産分割がまとまらず、真ん中から二つに割れた家と散らばった書類のイラスト

相続税の申告期限の10か月が来ても、遺産分割はまとまりませんでした。基礎控除は相続人3人で4,800万円で、遺産の総額6,000万円はこれを超えています。

同居していた長男が自宅を相続すれば、小規模宅地等の特例で土地の評価を8割減らせ、相続税はかからない見込みでした。ところが、分割が決まっていないため特例を使えません。法定相続分で分けたものとして申告し、きょうだい合わせて約120万円の相続税を納めることになります。分割が決まったあとで払い過ぎた税金を取り戻す手続きはありますが、申告のときに分割見込書を出しておくことが条件です。

調停が成立するまでには1年以上かかりました。その間に、長男と妹弟は父の法事でも顔を合わせなくなります。お金の問題が片づいても、一度壊れた関係は簡単には戻りません。

遺言があれば防げたこと

遺言がない場合とある場合の違い(遺産分割協議、特例の使いやすさ、相続税、家族の関係)を比べた図

もし父が「自宅は長男に、預貯金と株式は長女と次男に」という遺言を残していたら、流れは大きく違ったはずです。遺言があれば、遺産分割協議を経ずに長男が自宅を相続でき、特例を使って相続税がかからない見込みになります。

長女と次男の不公平感には、生命保険を使って応えられます。2人を受取人とする死亡保険に入っておけば、足りない分を保険金で埋められるからです。そのうえで、なぜこう分けたのかを遺言に書き添えておけば、きょうだいが互いを責める理由も小さくなります。

このように備えておくと、相続税の負担を抑えやすくなり、話し合いに費やす時間と気持ちの負担も軽くなることが見込めます。何より、父の考えが言葉として残っていれば、きょうだいの関係は保たれていたかもしれません。

相続トラブルを防ぐ遺言の選び方

遺言は、亡くなったあとの財産の分け方を、本人の意思として残す書面です。法律で決められた形式を守らないと無効になるため、気持ちをつづった手紙とは分けて考えてください。

ふだん使われるのは、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つです。どちらを選ぶかに加えて、遺留分への配慮と、気持ちを伝える付言事項の3点を押さえておくと、争いを防ぐ力がぐっと高まります。ここからは、遺言を作るときに押さえたいその3点を、順に見ていきましょう。

公正証書遺言と自筆証書遺言の違い

公正証書遺言と自筆証書遺言(法務局で保管・自宅で保管)の違いを、作る人、費用、検認、紛失のおそれで比べた表の図

公正証書遺言は、公証人が本人の話を聞いて作る遺言で、形式の不備で無効になるおそれがほとんどありません。原本は公証役場に保管され、亡くなったあとの家庭裁判所の検認も要りません。

自筆証書遺言は、本人が全文を手書きする遺言で、費用をかけずに作れます。2020年7月10日からは、法務局が自筆の遺言を預かる自筆証書遺言書保管制度も始まりました。

項目 公正証書遺言 自筆証書遺言(法務局で保管) 自筆証書遺言(自宅で保管)
作る人 公証人(証人2人が立ち会う) 本人が手書き 本人が手書き
費用 財産の額に応じた手数料 保管の手数料1件3,900円 かからない
家庭裁判所の検認 不要 不要 必要
紛失・書き換えのおそれ ない ない ある

法務局での保管は形式を確かめてもらえますが、中身の相談には乗ってもらえません(2026年10月時点)。家族の関係が複雑な場合や、自宅のように分けにくい財産がある場合は、公正証書遺言を選ぶほうが安心です。

遺留分に配慮した分け方にする

相続人が子3人の場合の法定相続分(各3分の1)と遺留分(各6分の1)を比べた図

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に法律で保障された、最低限の取り分のことです。遺言で「すべてを長男に」と書いても、ほかの子は遺留分にあたるお金を長男に請求できます。

遺留分は、相続人が親だけなら遺産の3分の1、それ以外なら2分の1を、法定相続分に応じて分けた割合です。たとえば相続人が子3人なら、1人あたり遺産の6分の1になります。

2019年7月1日以降の相続では、この請求は遺留分侵害額請求として、お金で支払う形になりました。請求された側に手元資金がなければ、結局は家を売ることにもなりかねません。遺言を書くときは、遺留分を下回る人が出ないか、出るならその分のお金をどう用意するかまで考えておきましょう。

付言事項で「なぜこう分けたか」を伝える

遺言書に添えた家族への手紙(付言事項)と封筒のイラスト

付言事項とは、遺言の最後に書き添える、家族へのメッセージのことです。法的な効力はありませんが、残された家族の受け止め方を大きく左右します。

「長男には、長年の介護への感謝として自宅を残す」「長女と次男には、その分を保険で用意した」。こうした一文があるだけで、分け方の理由が家族に伝わります。

数字だけの遺言は、受け取る側に「親は自分を軽く見ていた」という誤解を生むことがあります。親の言葉で理由が書かれていれば、きょうだいは互いではなく、親の意思と向き合えるはずです。遺言を書く前に、家族と一度話しておくのも一つの方法でしょう。付言事項は長い文章でなくてかまいません。感謝の言葉と、分け方の理由を一言ずつ添えるだけでも、伝わり方は変わります。

遺言と一緒に考えたい相続税の生前対策

法定相続人の数ごとの相続税の基礎控除額(1人3,600万円、2人4,200万円、3人4,800万円、4人5,400万円)の早見表

遺言で分け方を決めるときは、相続税がどれだけかかるかも一緒に確かめておくと安心です。分け方しだいで、使える特例や税額が変わるからです。

相続税は、正味の遺産額が基礎控除を超えるとかかります。基礎控除の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(2026年10月時点)。正味の遺産額とは、財産から借入金や葬式費用を引き、一定の生前贈与を足した金額をいいます。相続人が3人なら基礎控除は4,800万円で、自宅の土地と預金を合わせると超える家庭も珍しくありません。

分け方によって使える特例が変わる

遺産分割が決まっていないと使えない2つの特例(小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減)を示す図

小規模宅地等の特例を使うと、亡くなった方の自宅の土地は330㎡まで評価額が80%減ります。ただし、使えるのは配偶者や、同居していた親族などが相続した場合に限られます。配偶者の税額軽減は、配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円か法定相続分の多いほうまで相続税がかからない制度です。

どちらの特例も、原則として申告期限までに遺産分割が決まっていることが条件で、申告書を出して初めて使えます。モデルケースのように話し合いがこじれると、特例を使えないまま税金を納めることになります。

遺言で誰が自宅を相続するかを決めておけば、特例を前提にした計画が立てやすくなるでしょう。ただ、配偶者にすべてを集めると、二次相続で子の税負担が重くなることもあります。二次相続とは、残された配偶者が亡くなったときの相続のことで、二つの相続を通して試算しておくと安心です。

納税資金と「分けるお金」を準備する

自宅中心の相続で、相続税と代償金を生命保険の死亡保険金で準備する仕組みを示す図

遺産が自宅中心だと、相続税や、ほかの相続人に払う代償金を用意できないことがあります。代償金とは、ある相続人が多く受け取る代わりに、ほかの相続人に払うお金のことです。

生命保険の死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」まで相続税がかかりません。受取人を指定できるので、遺産分割協議を経ずに特定の人へお金を残せる点でも、生前対策と相性のよい方法です。

私たちは会社の経営支援で、毎月の入金と支払いを並べる資金繰り表を使います。相続の対策でも、相続後に出ていくお金と入ってくるお金を時期ごとに並べてみてください。保険や預金をどれだけ用意すればよいかが、数字で見えてきます。相続税がかからない家庭でも、代償金や葬儀費用のために現金の準備は欠かせません。

あわせて読みたい:融資・資金繰り支援(Axia Japan税理士法人)

相続の相談はいつ誰にする?税理士と司法書士の連携

相続が起きる前と後でできることの違い(前は遺言・財産の整理・相続税の試算・保険の準備、後は遺産分割協議・相続税の申告・相続登記)を比べた図

相続の相談は、相続が起きてからではなく、親が元気で判断できるうちにするのが理想です。遺言は本人にしか書けず、認知症などで判断する力が衰えると、作ること自体が難しくなるからです。

とはいえ、相続の準備には税金と法律の両方が関わります。相続税の試算は税理士、不動産の名義や登記は司法書士と、相談先が分かれています。このことも、対策を先延ばしにしてしまう理由の一つでしょう。ここでは、相続の前と後でできることの違いと、当事務所での進め方をご紹介します。

相続の前と後で、できることはこれだけ違う

相続の前と後でできることを並べると、次のようになります。

時期 できること
相続の前 遺言を作る、財産と名義を整理する、相続税を試算する、保険で納税資金と代償金を用意する、家族に考えを伝える
相続の後 遺産分割協議、相続税の申告(10か月以内)、相続登記(3年以内)、遺留分の請求への対応

相続の後にできるのは、決められた期限の中で手続きを進めることが中心です。一方、相続の前なら、分け方そのものを本人が決められます。

不動産の相続登記は、2024年4月1日から義務になり、相続で取得したと知った日から3年以内の申請が必要です。遺産分割がこじれると、この登記も進められません。相続税の申告は相続の後の仕事ですが、家族の関係を守れるかどうかは、相続の前の準備で大きく変わります。

税理士と司法書士がそろう当事務所の進め方

税理士と司法書士が連携して、遺言づくりから相続税の申告・相続登記まで一つの窓口で支援する体制を示す図

Axia Japan税理士法人では、グループ内に司法書士がいるため、相続税と登記の両方を一つの窓口で相談できます。相続が起きてから慌てて対処するのではなく、その前に手を打てるのが当事務所の強みです。

進め方は、次のような流れです。

  • 財産と家族の状況をうかがい、相続税がかかるかを試算する
  • 分け方ごとの税額と納税資金を税理士が示し、司法書士と遺言の内容を詰める
  • 公正証書遺言の作成や、不動産の名義の整理を進める
  • 相続が起きたあとは、相続税の申告と相続登記まで同じチームで対応する

税金と登記を別々に頼むと、遺言の内容と税金の計算がかみ合わないことがあります。最初から同じテーブルで考えれば、税金は軽いが家族が揉める分け方も、公平だが税金が重い分け方も避けやすくなります。相続税のご相談は無料でお受けしていますので、まずは気軽に声をかけてください。

あわせて読みたい:相続税対策・申告(Axia Japan税理士法人)

よくある質問

Q. 遺言はいつ作るのがよいですか?

判断する力がしっかりしているうちに、早めに作るのがおすすめです。遺言は何度でも書き直せ、内容が食い違う部分は新しい日付のものが優先されます。財産や家族の状況が変わったら、そのたびに見直せば十分です。思い立ったときが、作りどきといえます。

Q. 財産が少なくても遺言は必要ですか?

はい、財産が自宅と少しの預金だけという家庭ほど、遺言を残す意味があります。自宅は分けにくく、話し合いがこじれやすいからです。2021年の司法統計年報でも、家庭裁判所で扱われた遺産分割事件のうち、遺産額1,000万円以下が約3割を占めています。

Q. 遺言があれば相続税の申告は要りませんか?

いいえ、遺言の有無と相続税の申告は別の話です。正味の遺産額が基礎控除を超えれば申告が必要で、特例を使って税額がゼロになる場合も申告書を出します。遺言は、特例を使いやすい分け方を確かにするための準備と考えてください。

まとめ

相続トラブルは、財産の多さよりも、分けにくい自宅や家族の気持ちのすれ違いから起こります。相続が起きてからでは親の考えを確かめられず、話し合いが長引けば相続税の特例も使えなくなります。

防ぐ手立ての中心は、親が元気なうちに作る遺言です。形式の確かな公正証書遺言で、遺留分に配慮し、付言事項で理由を伝えておきましょう。あわせて相続税を試算し、保険などで納税資金と代償金を準備しておくと安心です。税理士と司法書士に早めに相談すれば、税金と登記の両面から備えられます。

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この記事の執筆者

相続の対策では、税額の計算だけでなく、家族の関係や納税資金まで見通した判断が欠かせません。執筆者は、税務申告にとどまらず、資金繰りなどの経営支援に取り組む税理士です。税金とお金の流れの両面から、相続の前の備えをご一緒しています。

福代 和紀(Axia Japan税理士法人 代表/Axia Japan Consulting合同会社 代表)

  • 税理士/米国公認会計士(Inactive)
  • 京都大学大学院 経営管理教育部(MBA)修了(首席)
  • 所属学会:日本管理会計学会、日本原価計算研究学会

参考文献

参考記事(Web)

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